ENo.0056　狂える王の妄執と憎悪の果てに辿り着いた廃魔王城

書架に通い詰めて幾日経ったか。
何も知らぬほかの兵達が妙な噂を立てているのは知っている。
知っているだけで、どうと思うこともないし何かする必要もなかった。
それに私の実力は周りもよく知るところ、
日々の業務を怠らない限り私に突っかかるような者はいなかった。

それの発見には大した時間がかからなかった。
どうやら儲け物の部類、理由などどうでも良いが
この城は研究成果を無造作に放る側だったらしい。
そんな有様なものだから、資料を持ち出すのもそう難しくなかった。
いちいち書架に来るのも面倒だ、自室で眺めることにしよう。

古い古い書式だった。
読み解くためには他の本の助けも必要になった。
何しろやることがやることだから、他人の助けは借りようが無い。
まずは簡素な儀式、身体に刻印を刻み、魔の力を乗せる。
それから行うことにした。
リスクは当然ある。
だからこそ書架の奥に押し込められていたのだろう。
しかし私の意思と肉体は横に並ぶものはほとんどいないという自負があった。
この程度の「強化」で呑み込まれるなら、
私はそれまでだということだ…。