ENo.0250　ライナス・D・ダルトン

なんたる屈辱……とまでは言わないが、不快だったのだけは間違いない。全てものをひとまとめにした評価や呼び方だったとはいえ、その、有象無象のひとつにされたのは、気に入らない。
別に自らを特別だとか、そういうことを言いたい訳ではなく、端的に言うとああいった手合いが大いに嫌いなのだ。
殺せるものなら殺すのだが、それは許される事ではない。ならば、ここでの力の示し方はひとつしかない。

「……忌々しい。まるで、踊らされている気分だ」

広い食堂で一人呟く。
この城はこの世界に元々あったもので、さらには神と名乗る者の管理下にある。とはいえ、その神とやらはあまり顔を見せないしそもそも顔がない。"嗤う道化の顔の神"と名乗るそれは自らを出来損ないと言っている。
ダルトンを魔王として引き留めている力の強さを省みれば、出来損ないとはいえど流石は神であると感心すら覚える。

「……難しい顔をしているな」

キッチンからティーカップをふたつ手にした金髪の男が、そのうちのひとつを魔術師の前におき、少し離れた位置に座る。
突然城に訪れた、魔王でも勇者でもない存在。自らが何者であるかもろくに覚えてないせいで、定義の輪から外れていったもの。それがこの金髪の男の現状である。
男が唯一覚えていたのはヴォルフというコードネームくらいで、あとの自らに関する記憶はあやふやである。だからこそ、魔術師が興味を持ってこの城においているのだが。

「フン、貴様の大した美味くない紅茶しか飲むものが無いからな」
「……手厳しいな」
「手を貸せ」
「は？」
「……少々気に食わない事があった。貴様もここにいるならば私に手を貸すのは当然の道理だろう？」
「……断る権利なんて、ないんだろ」
「……フン」

魔術師が何故終始不機嫌なのかもわからないまま、男は自分のカップのコーヒーに口をつけた。

『資料室』と書かれたドア看板の下に、『飲食厳禁　飲食はフードコートで』とか、『資料の外部持ち出し厳禁（館内は許可）』とか、そんなことが書いてある。
ここは水族館の資料室だ。あなたはここで様々な海の生き物の生態が書かれた本や、あるいは水族館職員のつけた記録を読むことが出来る。
――そして、この水族館には存在しないはずの、『人魚』という存在について、非常によく知ることが出来るだろう。

*知識全振りユニオン*
*ユニオン購入は独断脳死予定*
*細かいことは以下のURL*

http://midnight.raindrop.jp/trieste/union.html