ENo.0053　フィリリ

『アンデライト』を救う。
それがどんなことだか、フィリリはよくわからなかった。
ただ、何か必要としている者がいて、対価とひきかえにそれを与える。
いつものやりとりだ。いつもの。繰り返されてきた、そして自分が身を投じた“経済”。
需要と供給。そこに笑顔や喜びが生まれれば、もっと良い。それだけ。
そうして経済は発展していく。
増え、熟す果実。



落ちない果実など――あるだろうか？

落ちる果実。春のための冬。
無限に続く砂時計など、意味を成さない。

――…………。



フィリリは考えることが得意ではない。
頭の中がいっぱいになってくると、放り投げてしまう。
尻尾を“ぶん”とひとつ振る。
それが区切りをつける、いつもの合図だ。

「～♪」

歌いながら、仕入れのことを考え始めるのだった。

《砂風呂屋》の奥、《魔王以外立ち入り禁止》の扉を開くと、ぽっかりと在る空間。
公園のお砂場、プライベートビーチ、あるいは砂丘、砂漠、そんなところ。



今週の作品　『とかげ』