ENo.0027　トゥオファ・ヤーク

羽毛に包まれるような中身のない幸福感が体中を覆っている。
鬱陶しいそれを振り払うように、何も見えない光の中を走り、もがく。

「―――――！」

今の自分は何かが足りない。猛烈な焦燥感が体を動かす。
それなのに、どう足りないのかわからない。
よこせ？ 返せ？ 来い？
行き場を失った言葉はうめき声に変わって、喉だけを震わせる。

真綿が全身を締め上げてくる。
ふざけるな。こんなもので自分を騙せると思うな。
……自分？ 私？ 俺？ 僕？
わからない。集中を切らした隙から自分がどんどんと流失していく。
白い空間には憎しみを込めてかきむしった爪痕すら残らない。
そもそも何が足りないのだった？
どうしてこんな場所にいる？
なぜ幸福に抵抗するのか？
わからない。

甘い泡に頭まで埋められる。
頭の中まで甘くなっていく。
疲れた手足は動かすのが馬鹿らしくなって、失ったことはどうでもよくなっていく。
倒れたふりをして横たわれば、虚無が体を優しく受け止めた。
ぼんやりしている。
もう全てのものがこぼれ落ちてしまったのかもしれない。
こぼれ落ちるとは何の話だったか。
まぶたに力が入らない。
全身がほぐれて軽くなっていくような気がする。
理由の分からない皮肉に笑いながら、静かに夢見心地に浸っていく。
わからない。
しあわせ。


それでも。


「―――――、―――――、―――――、―――――……」


足りない。
足りない。








おはよ～。

先週はトリプルアクセルいっぱい決まってよかったね～。
5回転ジャンプもあった気がするんだけど夢だったかな。
夢の5回転ジャンプ。たぶん夢だ。いい夢～。

そうそう、うちのお店に他の魔王さんが来てくれた。
ごあいさつしなきゃ～。手土産っているのかな？

豆腐売るときってラッパ鳴らすんだって。
ラッパ吹こうよ、ラッパ。
僕チューバがいい。


*特に何もしない魅了特化ユニオンです*