ENo.0076　デボド"B・A・D"ギギゾジ

だるい。

初日は客を入れるというより、開店の準備期間だ。
……と、周囲の魔王の動きを見て気付いた。
勿論、俺様殿の店はそんな事はしていない。
だめにんげん一号は緊張でそれどころではないからだ。

と言う事で、初日は客も来ずぼんやりと過ごした。

――営業日報_初日　デボド“B・A・D”ギギゾジ


だるい。

二日目だ。準備が早い店は既に客が入っている。
一部は客ではなく略奪勇者が入っているようだが、
特段被害らしい被害は出ていないらしい。

勿論俺様殿の店は閑古鳥だ。
だめにんげん一号しかいないからな。
呼び込みも何も他の魔王に追いつける訳がない。

二日目もだらだらと過ごした。
だめにんげん一号にはみかんをくれてやった。

――営業日報_二日目　デボド“B・A・D”ギギゾジ

だるい。

押し売りに近い手法が一番効果的に見える。
売り上げを出している魔王はとにかく手が早く、
愛想がよく、そして売込みが上手いのだ。

俺様殿の店はと言えば……初めての来客があったらしい。
だめにんげん一号が夕食の場で嬉々として報告してきた。
しかも売ることに成功した、と満面の笑みだ。
俺様殿もそういった話を聞くのは悪い気分はしない。

――営業日報_三日目　デボド“B・A・D”ギギゾジ

だるい。

特筆すべき点はない。
強いて言えば、カルマ勇者（略奪する者の事らしい）が一人撃滅されたとか。

ウキウキ顔のだめにんげん一号だったが今日は客が来ず、
夕食時には落ち込んでいた。
無意味に期待するからそうなるのだ、と言っておいた。

――営業日報_四日目　デボド“B・A・D”ギギゾジ

だるい。

客が来る、という事に対して警戒している魔王は
いずれも行動が速い。とにかく速い。
特に目に付いたのはおよそ警戒しているとは思えない、
「心ここにあらず」といった風情の魔王の店と、
「女吸血鬼」の店員が愛想を振り撒く魔王の店だ。
魔王は見かけによらない。ああいう者が金を稼ぐのだろう。
……と思っていたら、女吸血鬼の店が陥落したらしい。
商売はまったくわからん。

俺様殿の店は今日も閑古鳥だ。
――にしても、営業日報が三日坊主ではない事に驚いている。
だめにんげん一号にも言われたのでつねっておいた。

――営業日報_五日目　デボド“B・A・D”ギギゾジ

だるい。

今日は客が来たらしい。だが、物は売れなかった。
恐らく求めていた物がなかったのだろう。
だめにんげん一号が申し訳なさそうにしているが、
どうでもいい事だ。気にするなと言っておいた。

――営業日報_六日目　デボド“B・A・D”ギギゾジ

だるい。

カルマ勇者共が何人か倒れたとの噂を聞く。
また、それらが再度立ち上がったとも。
どちらにせよ俺様殿には関係ないが。

毎日書いていては身がもたないことに気付く。
特筆すべき点がない日は何も書かずに過ごす事にした。

――営業日報_七日目　デボド“B・A・D”ギギゾジ

だるい。

驚くほど何も起きないまま日が過ぎる。
今日から夜更けの営業を開始した為、日誌を書いている。
深夜に妙な男が買い物をしていったので、
よく頑張った、とだめにんげん一号を褒めておいた。

――営業日報_二十三日目　デボド“B・A・D”ギギゾジ

だるい。

この時点で勇者は全員倒れたようだ。
俺様殿の店も次週に向けての準備を進める。
もう今週売れることはないだろう。

――営業日報_二十七日目　デボド“B・A・D”ギギゾジ

だるい。

無事、営業を終えた。
次週以降どうなるかが少し楽しみになっている。
だめにんげん一号が楽しげなのに釣られている気もするが。

まあ、どうでもいいことだ。

――営業日報_三十日目　デボド“B・A・D”ギギゾジ