ENo.0042　紅のイエル

　部族の神官職として私は決して悪事を働いたことはなかったはずである、そう思いながらイエルは迷宮の奥、無駄に豪奢な椅子の上でため息を吐く。そのたびに木製のビーズでできた髪飾りや、ガラス玉でできたネックレス、紫水晶の飾りなど身につけている装飾品がぶつかり、音を立てる。これらは贅沢の象徴――ではなく、神官として身につけなければならない装飾品の一部であった。飾り立てることは神に仕える人間としての相当の身分を示すものであり、神官という存在自体が神への供物であるのだ。故に、食べ物などを捧げるのではなく、民は神官に装飾品を捧げる。それらを余すことなく身につけることによって神官は"決して我々はあなた方の供物に手を付けることなく、あなた方の捧げたものは全て神のものである"ということを示すのだ。染料を惜しむことなく全身に入れられている刺青も、全ては神への供物である証である。
　そう、イエルは神官等の中でも高位、さらに真面目実直に神官という役目をこなしてきたのであった。そんな彼を神はいたく気に入っていたのだろう。神は、彼に役目を与えた。

　――その結果が、今だ。

　魔王になるのは、これで三回目。一度暗黒剣士に強制的にジョブチェンジをさせられたりもした。結果的にイエルは現在新しく作られた迷宮の奥の自室で悲しいくらいのため息をついているのだ。

　自分は神官であり、王などという存在ではない。
　ましてや"暗黒剣士"でもない。
　というかジョブチェンジのせいで神官という役目を奪われて追い出された。
　それでも、神に仕え続ける彼は神へ今日も祈る。

　神よ、私は何か悪いことをしたのでしょうか。

　きっと神はこう答えるだろう。イエルはそれに気づくことはない。
　いや、彼はまったく自覚していないのだ、しかたがあるまい。



　――だって、君、魔族やん。魔王にちょうど良いって。

【概要】
ジェ●ガを積みます。
崩したら、ちゃんと直しといてください。

で「ぬぬぬ………集中力を鍛えているのだよ」

【お知らせ】
忍耐特化ユニオンです。
146、ディアーナちゃん様が誘っています。