ENo.0016　ヒカル・A・ウエザラル

「あゝ・・・・ついに、この世界ともお別れかぁ」

『最後の襲撃者』との戦いを前にして、ぽつりとつぶやく『見た目は人外でも普通の人間』の日本名は『阿山 煕（あやま ひかる）』、西洋名は『ヒカル・アヤマ・ウエザラル』その人である。

「ホンマに色々あったね・・・・うん・・・・」

この世界に来てから本当に沢山の経験をした。
此処へ来るまでは、まさか自分が『如何にもファンタジー』な世界で戦う事になろうとは思ってもみなかった。
でも今その経験をして何かと成長できた・・・・割と『長く』生きてたが、こんなに色んな意味でドキドキする事も初めての経験で本当に楽しかった。
最初は帰りたくて仕方なかったが今になって、この世界から去るのは惜しい気がした・・・・が、そうは許さないようだ。

・・・・だからこそ。

「よっしゃ、最後の最後や！ホンマに気合入れて行くで！！」

悔いの無いように戦う事を決めた、ただの人間でも此処まで出来る事を知った・・・・だからいつも以上に気合を入れる。

「ほな・・・・いくで！」

そして、最後の『勇者』との戦いが始まった。







・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。



















・・・・・・・・。









「・・・・うーん？」












「・・・・って、あれ？」

良く知る道・・・・何時も行くコンビニから自分の店へと続く道の途中で、ぼけっと突っ立っている『阿山 煕（あやま ひかる）』その人である。

「え・・・・あれ・・・・あの世界で『勇者』と戦って・・・・それで・・・・俺、帰って来た？」

どうみても今いる場所は『ある時間線の日本』である・・・・。

「そ・・・・そうや・・・・今は何時や！？」

ポケットに入れてあったスマートフォンを見る・・・・その時間は・・・・。

「あ・・・・あれ・・・・そのまゝの時間？」

確かに『あちらの世界』では15週も居たはず・・・・なのにあの時に飛ばされた時間そのまま・・・・そして今、普通に時間は進んでいる。

「・・・・夢やった？」

ふと・・・・ビールが入っているコンビニの袋を見る・・・・その本数は・・・・。

「・・・・減ってる・・・・夢じゃない」

『あちらの世界』で6本中1本は最初に飲んだ、そして向こうで出会った『魔法使いの少女』に2本渡し、その時に1本飲んだ・・・・コンビニの袋の中にはビールが2本だけ・・・・明らかに減っている！

「あっ・・・・夢じゃない・・・・夢じゃなかったんや！」

凄く嬉しそうに叫んだ。
道行く人は・・・・少々怪訝な顔をして彼を見たが直ぐ興味を無くして、それぞれの場所へ歩いてゆく。

「よっし・・・・帰ろうっ我が家・・・・いや店にね！」

自分の経営している『カフェ＆バー』・・・・その店は自宅も兼ねている・・・・。

そうだ一緒に生活している『歳の離れた弟』や『弟の孫息子』に今回あった話をしてみよう！
ついでに『一番上の兄ちゃん』や『六男坊』と『九男坊』も呼んでね・・・・酒の肴には良い話になると思うしね。

「よっし・・・・ほな急いで帰るか！」


そうして俺は、少し早足で夜道を駆け家路に就いた。








それは少し蒸し暑い・・・・梅雨が明けたばかりの夏の始まり、そんな季節に起こった不思議な体験の物語でしたとさ。