ENo.0028　ハーヴィスト・T・アビス

不条理を抱えし最愛なる妹へ。
先日の失態に関してはこの度は敢えて語るまでもなかろう。
母上はご立腹だ。
しかし汝に全ての責を問う問題でもないのが些か歯痒き問題でもある。
ふむ、しかしながら一切を不問とすることもできまい。
其の世界は汝の望みうる未来に近しき世界と聞く。
ほとぼりが冷めるまでは其処でその裡に潜むものを鎮めておくことだ。

・・・・・・。

兄上め。我の日記帳を勝手に読むどころか書き込むとは万死に値する。

…。とはいえ、先日の記憶が完全に消えているのは、またあれをしてしまったということなのだろう。迷宮の一角ももう通れないほどぐちゃぐちゃに歪んでしまっている。わたしはわたしの中にいるこれをどう扱えばいいの？誰か………

…。
誰に頼るということでもあるまい。我は魔王。
ハーヴィスト・シソーラス・アビス。
全てのものを統べる魔王になるべくして生まれた魔王。
負けたりはせぬ。負けたりはせぬぞ。うんうん。

…。
さて、あきないが少し滞ってしまった。部下たちに顔を合わせ辛くはあるが、先日の遅れは此の身をもって取り戻さねばなるまい。