ENo.0012　人喰いの嬰児 ヒンガン

　時に、畜産家は語る。
　家畜にために己を奴隷とせねばらならいと。

　不始末を片付け、身体を洗ってやり、餌を与え大事に育て上げる。
　その結果、美食家を唸らせる最高の食が生まれるのだ。

　あぁ、君たちを愛しているよ。
　私の大事な財産として。
　そして、最高の味として。

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　夜、寝るときには女を抱いて。
　朝、その抱いた女の肉が朝食に並ぶ。
　昼間は年老いた親の代わりに領主の仕事を肩代わりし、若いのにとよく言われる。

　いつだってそんな日常を、腹の脇から見てきた。
　皮膚に阻まれていたのではないかとか、視神経からは程遠いとか原理や理屈を語るつもりはない。
　“視えて”いたんだ。
　鏡で髪を整える。金糸は右から左に流れ、血のように赤い眼。

　記憶は数多にあれどどれも夢見心地で覚束無い。だがハッキリと、鮮明に“見た”記憶は最も真新しい物だ。
「ヒンガン。そうだ、ヒンガンと名を付けよう」