ENo.0196　毛皮の無い白狼の魔王

カラはカロスの放言を窘めなかった。事実、アンデライトは弱小であった。次元潜航という問題の先送りが抱える限界点に対し、その成長曲線は（この二人の苛烈極まりない評価基準において、という注釈こそ付くが）まるで満足の行くものではなかった。

「役に立つかしら。」
「わからない。あのレヒルとかいう雑音主任が自信たっぷりに並べた技術がどういうものかわからないし、評価のしようがないよ」

率直な意見だった。流石に、いない方がましとは言わなかった。

「どのみち、カネはもらったんだからカラとしては問題ないでしょ？」

紙面をテーブルの向かいへと投げ出し、屈託無く笑いながらカラの方へと振り向いた。邪気の無い笑顔は国ひとつを捨て石として省みない冷酷さと裏表のように対極だった。

「僕としてはそろそろ新しい足を試してみたい」
「前はいらないって言ってなかった？」
「うん、あのままならいらない。いらないけど、欲しい」
「試しは試しよ。検証に最初から過剰な性能がいるわけないでしょ。」
「でも、期待しちゃうんだよ」

カロスが珍しく口を尖らせながら文句めいた言葉を吐いた。全く歳相応の子供のような口調であった。

「なんか、違う感じがしたから。それに、カラの作る本物でしょ、前のよりずっとよさそうだ」